2015年01月18日
膝の治療 具体例
高齢者の膝の痛みは多くが加齢変化による軟骨の損傷と筋力低下です。ほとんどの場合、整形外科で治療を受けています。そして、病院で言われることは 「体重を落とす事」 「運動をして膝周囲の筋肉を強化すること」 です。真面目にその指導に取り組めば、かなり症状は改善するのですが、ほとんどの場合、そうはしません。多くの患者さんは、痛みの原因についての認識が明らかではないようです。膝関節の形に自然治癒しようのない変形が起こっている、という認識がないようです。変形については、どうしようもないのですが、筋肉強化については、年齢にかかわりなく本人主導でどうにでもなる、という事の理解も少ないようです。
整理しますと、 1.痛みの主たる原因は膝の変形 2.膝の変形は治らない 3.膝周囲の筋肉を強化することで痛みは軽減・改善する 3.筋力強化は自分がやるしかない 4.筋力強化は、結果が出るまでに週3回以上の訓練で3カ月ほどの期間がかかる
という理解がまず必要です。変形の程度が軽く。筋力もしっかりしている方なら、整形外科や整骨院・鍼灸治療院での治療だけでよくなる事もあります。しかし、基本的には膝の痛みの治療には、「本人の筋力強化」という側面が欠かせません。
それでは、うちのような治療院では何をするかというと、まず、鍼やマッサージ・整体などで、膝の炎症を抑えて痛みを軽減します。そして、症状に応じてテーピングをして普段の歩行が楽になるようにします。そのようにして、痛みがなく歩行できる条件を整えながら、筋力強化を指導して経過を追っていきます。1日10分ほどであっても、きちっと筋力訓練をすれば、1カ月ほどで少し変化が現れ、3カ月ほどで改善がみられるものです。何より大事なのは、患者さんの根気と。治療する側の患者さんをうまく指導していく根気ということです。
整理しますと、 1.痛みの主たる原因は膝の変形 2.膝の変形は治らない 3.膝周囲の筋肉を強化することで痛みは軽減・改善する 3.筋力強化は自分がやるしかない 4.筋力強化は、結果が出るまでに週3回以上の訓練で3カ月ほどの期間がかかる
という理解がまず必要です。変形の程度が軽く。筋力もしっかりしている方なら、整形外科や整骨院・鍼灸治療院での治療だけでよくなる事もあります。しかし、基本的には膝の痛みの治療には、「本人の筋力強化」という側面が欠かせません。
それでは、うちのような治療院では何をするかというと、まず、鍼やマッサージ・整体などで、膝の炎症を抑えて痛みを軽減します。そして、症状に応じてテーピングをして普段の歩行が楽になるようにします。そのようにして、痛みがなく歩行できる条件を整えながら、筋力強化を指導して経過を追っていきます。1日10分ほどであっても、きちっと筋力訓練をすれば、1カ月ほどで少し変化が現れ、3カ月ほどで改善がみられるものです。何より大事なのは、患者さんの根気と。治療する側の患者さんをうまく指導していく根気ということです。
2015年01月16日
自律神経四方山話
人の神経系には、①中枢神経(脳と脊髄)と ②末梢神経 があります。
末梢神経の中に ①知覚神経 ②運動神経 ③自律神経があります。
自律神経は内臓などに命令を送っている神経です。自律神経は意図的に制御する事が出来ないものです。手足は意図的に動かすことが出来ますが、意図的に胃を動かしたりホルモンを分泌させたりはできません。これが自律神経と呼ばれる所以です。
自律神経には ①交感神経 と ②副交感神経 があります。交感神経と副交感神経は正反対の作用を持っています。
交感神経はエネルギーを消費して、身体を攻撃的な方向に向けます。副交感神経はエネルギーを
蓄積して、身体を休息の方向に向けます。交感神経優位の時とは、例えは戦闘時の状態です。瞳孔は散大して心拍は増加して血管は収縮します。そして戦闘に用のない消化器の活動は抑制されます。
副交感神経優位の状態は、リラックスして自宅で寛いでいる状態です。
自律神経を切除した動物でも、実験室の環境内では生存に大きな問題は起こりません。食事が保障されて、気温が快適にコントロールされて、敵対するものがいない状態では、自律神経が無くてもほとんど困りません。
しかし、実際の生活では、暑い寒いがあり、走ったり跳んだり、騙したり騙されたり、戦ったり逃げたりと、身体の状態が大きな変化に曝されます。そこをうまく調整して、身体が健全に活動していけるように調整しているのが自律神経です。いわゆる自律神経失調症はそうした調整機能が崩れた状態です。おなかが痛くなったり、逆上せや冷えといった状態から、カスミ眼や立ちくらみ等多彩な症状があります。
そうした自律神経の不具合を調整する方法として手軽なものが、冷水摩擦や乾布摩擦です。皮膚への寒冷刺激や物理的刺激が自律神経を上手く刺激して、交感神経と副交感神経のバランスのとれた活動を促進します。自律神経が関係した眩暈などでは乾布摩擦が推奨されています。
そして、当然、太極拳は自律神経の調整に多大な効果を与えます。月に1度くらい不調で寝込んでいたのが、太極拳で良くなった、という人もいました。
太極拳は身体的には副交感神経優位の状態を保とうとしています。リラックスする事で気の流れを良くする為です。しかし心理的にはかなりの意図的な努力とめまぐるしい精神活動が必要で、交感神経優位の状況と言えます。また、身体状況もただリラックスしている訳ではありません。攻撃の形を取った瞬間は短時間、交感神経優位の状態が出現するともいえます。
そのようにして、型を練習する中で、交感神経と副交感神経が微妙に混在して変転していく事が
大切です。言い換えれば、陰陽の変化・虚実の変化です。
太極拳は、穏やかな天界の昼下がりに、修羅が見え隠れする武術のようですね。
末梢神経の中に ①知覚神経 ②運動神経 ③自律神経があります。
自律神経は内臓などに命令を送っている神経です。自律神経は意図的に制御する事が出来ないものです。手足は意図的に動かすことが出来ますが、意図的に胃を動かしたりホルモンを分泌させたりはできません。これが自律神経と呼ばれる所以です。
自律神経には ①交感神経 と ②副交感神経 があります。交感神経と副交感神経は正反対の作用を持っています。
交感神経はエネルギーを消費して、身体を攻撃的な方向に向けます。副交感神経はエネルギーを
蓄積して、身体を休息の方向に向けます。交感神経優位の時とは、例えは戦闘時の状態です。瞳孔は散大して心拍は増加して血管は収縮します。そして戦闘に用のない消化器の活動は抑制されます。
副交感神経優位の状態は、リラックスして自宅で寛いでいる状態です。
自律神経を切除した動物でも、実験室の環境内では生存に大きな問題は起こりません。食事が保障されて、気温が快適にコントロールされて、敵対するものがいない状態では、自律神経が無くてもほとんど困りません。
しかし、実際の生活では、暑い寒いがあり、走ったり跳んだり、騙したり騙されたり、戦ったり逃げたりと、身体の状態が大きな変化に曝されます。そこをうまく調整して、身体が健全に活動していけるように調整しているのが自律神経です。いわゆる自律神経失調症はそうした調整機能が崩れた状態です。おなかが痛くなったり、逆上せや冷えといった状態から、カスミ眼や立ちくらみ等多彩な症状があります。
そうした自律神経の不具合を調整する方法として手軽なものが、冷水摩擦や乾布摩擦です。皮膚への寒冷刺激や物理的刺激が自律神経を上手く刺激して、交感神経と副交感神経のバランスのとれた活動を促進します。自律神経が関係した眩暈などでは乾布摩擦が推奨されています。
そして、当然、太極拳は自律神経の調整に多大な効果を与えます。月に1度くらい不調で寝込んでいたのが、太極拳で良くなった、という人もいました。
太極拳は身体的には副交感神経優位の状態を保とうとしています。リラックスする事で気の流れを良くする為です。しかし心理的にはかなりの意図的な努力とめまぐるしい精神活動が必要で、交感神経優位の状況と言えます。また、身体状況もただリラックスしている訳ではありません。攻撃の形を取った瞬間は短時間、交感神経優位の状態が出現するともいえます。
そのようにして、型を練習する中で、交感神経と副交感神経が微妙に混在して変転していく事が
大切です。言い換えれば、陰陽の変化・虚実の変化です。
太極拳は、穏やかな天界の昼下がりに、修羅が見え隠れする武術のようですね。
2015年01月10日
変形性膝関節症と鍼灸
膝の痛みは多くの原因で起こります。若い人であれば、スポーツ等で靭帯や半月板を損傷する事も稀ではありません。中年以降では膝疾患で最も多いのが、変形性膝関節症です。
変形性膝関節症は、軟骨の摩耗や関節の変形、骨棘の形成などが起こり、歩行時痛を主体とするものです。多くはO脚のように、膝が外側に向かって変形する内反変形になります。原因は明らかでない事が多いのですが、肥満や膝周辺の筋力低下などが原因と考えられています。
もともと大腿骨と脛骨は真っ直ぐ膝でつながっているのではありません。大腿骨と脛骨を結ぶ線は、180度ではなく膝で少し内側に入って175度くらいになっています。こうして股関節から足関節へ体重がかかる軸は、膝の中心を通っていく事になります。ところが、O脚のように膝が外に出ている状態ですと、膝関節の内側に体重がかかるようになります。そうした極端な状態が続くと膝関節の関節面にある軟骨が損傷していきます。その結果、痛みが出る、炎症が起きる、水がたまる等の症状が出てきます。
変形性膝関節症は初期のうちは、体重の減少や、筋力強化訓練、足底版の使用等で改善していきます。症状が進行すると、病院で手術を勧められるようになります。
1度摩耗変形した関節軟骨は再生しません。変形した膝周辺の骨も元には戻りません。唯一筋肉だけが、鍛えることで発達していき膝を守る力になります。ですから、変形性膝関節症は「治る」という事はない訳です。ただ、痛みを取り歩行状態を改善していくことは可能です。人によっては、それを、「治った」と感じる場合もあるわけです。
変形性膝関節症に対しての鍼灸治療の役目は、痛みと炎症の改善です。いくら筋力訓練が良いといっても、現に痛みがあればそれどころではないのが人情です。そうした時に鍼を行いながら、リハビリをしていく事で、筋力強化が楽に進むようになります。なんといっても、歩くときに痛みのあった膝が、痛みが取れていくというのは本人にとっては大きなことです。また、膝周辺の弱くなり固くなった筋肉に鍼をすることでリハビリの効果も上がっていきます。
変形性膝関節症の治療に関しては、患者さんの筋力強化などのリハビリと、その時その時の状態に合わせた鍼治療の両方がそろってこそ、良い結果が早く出るものです。
変形性膝関節症は、軟骨の摩耗や関節の変形、骨棘の形成などが起こり、歩行時痛を主体とするものです。多くはO脚のように、膝が外側に向かって変形する内反変形になります。原因は明らかでない事が多いのですが、肥満や膝周辺の筋力低下などが原因と考えられています。
もともと大腿骨と脛骨は真っ直ぐ膝でつながっているのではありません。大腿骨と脛骨を結ぶ線は、180度ではなく膝で少し内側に入って175度くらいになっています。こうして股関節から足関節へ体重がかかる軸は、膝の中心を通っていく事になります。ところが、O脚のように膝が外に出ている状態ですと、膝関節の内側に体重がかかるようになります。そうした極端な状態が続くと膝関節の関節面にある軟骨が損傷していきます。その結果、痛みが出る、炎症が起きる、水がたまる等の症状が出てきます。
変形性膝関節症は初期のうちは、体重の減少や、筋力強化訓練、足底版の使用等で改善していきます。症状が進行すると、病院で手術を勧められるようになります。
1度摩耗変形した関節軟骨は再生しません。変形した膝周辺の骨も元には戻りません。唯一筋肉だけが、鍛えることで発達していき膝を守る力になります。ですから、変形性膝関節症は「治る」という事はない訳です。ただ、痛みを取り歩行状態を改善していくことは可能です。人によっては、それを、「治った」と感じる場合もあるわけです。
変形性膝関節症に対しての鍼灸治療の役目は、痛みと炎症の改善です。いくら筋力訓練が良いといっても、現に痛みがあればそれどころではないのが人情です。そうした時に鍼を行いながら、リハビリをしていく事で、筋力強化が楽に進むようになります。なんといっても、歩くときに痛みのあった膝が、痛みが取れていくというのは本人にとっては大きなことです。また、膝周辺の弱くなり固くなった筋肉に鍼をすることでリハビリの効果も上がっていきます。
変形性膝関節症の治療に関しては、患者さんの筋力強化などのリハビリと、その時その時の状態に合わせた鍼治療の両方がそろってこそ、良い結果が早く出るものです。
Posted by 渡辺克敬(わたなべ かつゆき) at
01:08
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2015年01月06日
ほっとするお灸の暖かさ
「月日は百代の過客にして、いきかふ年も又旅人なり。・・・・・・・股引の破れをつづり、
笠の緒付けかへて、三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて・・・」
~松尾芭蕉の「おくのほそ道」の序章です。旅支度の1つに、足の三里にお灸をする事が書かれています。「足の三里」は膝の下の外側にあるツボの名前です。ここにお灸をすると健脚になるという事で、旅の前に準備をしています。実際の登山の前に、2週間くらい前から何回か三里にお灸をしたことがあります。そうすると、以前のお灸をしていない時と比べて、足が楽であったのを私も経験したことがあります。昔の旅は自分の足だけが頼りですから、しっかりと足の準備もしたのですね。このように、お灸は昔から人々の生活に密着して存在していました。
安藤広重の「木曽街道六十九次之内柏原」には、「かめや」という もぐさ屋が描かれています。この「かめや」さんは、今も営業しているそうです。昔は今と比べると、お灸や艾(もぐさ)は特別な物ではなかったのです。私の祖母も、私が子供の時に自分でお灸をしていた記憶があります。また、特に関西では、今もお灸を「やいと」といって親しまれています。
お灸に使うものは艾です。艾は蓬から作られます。草餅に使われる蓬です。5・6月頃に蓬の若葉を刈取り、陰干しして良く乾燥させます。その後に、石臼などでついて綿状にしたものが艾です。良い艾は淡黄色で柔かく、火をつけた時の温度が低いものです。温度が低く皮膚への浸透が良いので、まったりした温熱感、と形容されます。
お灸というと人によっては、かちかち山のような煙と火の塊を想像するかもしれません。しかし、お灸にもいろいろあります。お米の半分ほどの艾で、瞬間にチクッとするだけで後には心地よい暖かさが残る~うちで行っているお灸はそういったお灸です。特にこの冬の寒い時期には、背中や足のお灸は終わった後のポカポカ感がありがたく感じられます。胃腸の不調や腰肩の痛みなどにお灸をすると意外と効果的で気持ちの良いものです。
笠の緒付けかへて、三里に灸すうるより、松島の月まづ心にかかりて・・・」
~松尾芭蕉の「おくのほそ道」の序章です。旅支度の1つに、足の三里にお灸をする事が書かれています。「足の三里」は膝の下の外側にあるツボの名前です。ここにお灸をすると健脚になるという事で、旅の前に準備をしています。実際の登山の前に、2週間くらい前から何回か三里にお灸をしたことがあります。そうすると、以前のお灸をしていない時と比べて、足が楽であったのを私も経験したことがあります。昔の旅は自分の足だけが頼りですから、しっかりと足の準備もしたのですね。このように、お灸は昔から人々の生活に密着して存在していました。
安藤広重の「木曽街道六十九次之内柏原」には、「かめや」という もぐさ屋が描かれています。この「かめや」さんは、今も営業しているそうです。昔は今と比べると、お灸や艾(もぐさ)は特別な物ではなかったのです。私の祖母も、私が子供の時に自分でお灸をしていた記憶があります。また、特に関西では、今もお灸を「やいと」といって親しまれています。
お灸に使うものは艾です。艾は蓬から作られます。草餅に使われる蓬です。5・6月頃に蓬の若葉を刈取り、陰干しして良く乾燥させます。その後に、石臼などでついて綿状にしたものが艾です。良い艾は淡黄色で柔かく、火をつけた時の温度が低いものです。温度が低く皮膚への浸透が良いので、まったりした温熱感、と形容されます。
お灸というと人によっては、かちかち山のような煙と火の塊を想像するかもしれません。しかし、お灸にもいろいろあります。お米の半分ほどの艾で、瞬間にチクッとするだけで後には心地よい暖かさが残る~うちで行っているお灸はそういったお灸です。特にこの冬の寒い時期には、背中や足のお灸は終わった後のポカポカ感がありがたく感じられます。胃腸の不調や腰肩の痛みなどにお灸をすると意外と効果的で気持ちの良いものです。
Posted by 渡辺克敬(わたなべ かつゆき) at
23:50
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